
3時限目は、土壌中に栄養分が蓄えられ、植物に吸収されるまでの流れを勉強しました。

次はいよいよ、肥料について学んでいこうと思います。
肥料についての勉強は長くなりますので、4時限目、5時限目の2回分を使ってやっていきたいと思います。
内容は下の通り。

4時限目はまず「肥料って何?」というところから。
肥料がどんな役割のもので、どんなふうに扱われているのかということを学んでいきます。
そして、5時限目に肥料の中身や、それぞれの特徴を勉強していきたいと思います。
それでは勉強を始めましょう!!
1.肥料って何?
そもそも、肥料って何でしょうか?土とは違うの?
そんな疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
いきなり肥料の中身から入ると、混乱してしまいますから、根本的なところから整理していきましょう。
肥料の役割は?
植物は土から栄養分を受け取って体を作り、生長していくということを3時限目に学びました。

自然界では、そうした栄養分を含んだ粘土鉱物や有機物が常に外側から供給されます。
供給される養分のバランスや量、また養分を保持する容量が土地によって様々であるため、「肥沃な土地」や「貧弱な土地」の区別が生まれます。
その栄養分を人為的に供給して地力を補うのが肥料です。
肥料をやることで、栄養分に乏しい土地での栽培活動が可能になり、また自然からの栄養供給量を上回る速度で、作物を生産することができます。

園芸ではどんな位置づけ?
園芸では、いくつかの種類の資材を混ぜ合わせて用土をつくります。
それぞれに役割があり、肥料もそのうちの一つです。
TOMOZOOでは各資材の役割を下のように考えています。
- 赤玉土・黒土などの土(栄養分の吸着・保持、水分の吸着・保持)
- 鹿沼土・日向土などの軽石(排水性・通気性の向上)
- バーミキュライト・ピートモス・くん炭などの土壌改良剤(土の物理性改善や病原菌の抑制・水の浄化・化学性の調整など)
- 有機肥料・化学肥料などの肥料(栄養分の供給)
- 堆肥(土壌の物理性向上・微生物の供給による病原菌抑制や植物への可給態養分の供給)

2.肥料にはどんな種類があるの?
前項では、肥料の役割と園芸用土の中での位置づけについて大まかに紹介してきました。
今度は肥料に焦点を絞って詳しく見ていこうと思います。
植物の栄養分を供給する肥料には、一体どれだけの種類があるのでしょうか?
お店で販売しているだけでも何十種類とありますので、それらひとつひとつを見ていくなんてことはとてもできません。
また、いくつもの種類の肥料を配合して製品としている物や、性質の異なる肥料を組み合わせて、バランスよく効果を得られるように開発されている製品もありますので、明確に分類することも困難です。
ただし、それらの肥料をいくつかのグループに分けてその性質をとらえることはできます。
ここでは、代表的な数種類の肥料(グループ)を取り上げ、それぞれ解説していきたいと思います。
その際に参照されるのが「肥料取締法」における分類(グループ分け)です。
国内で取り扱われている肥料は、この「肥料取締法」のもとで生産・輸入・流通していますから、登録のある肥料はすべてこのいずれかのグループに属しているということになります。
ざっくりと把握するために、図を掲載します。
なお、これらの肥料(グループ)名は「肥料取締法」に記載されている名称をとりあげたものです。

内容をざっと見ていきましょう。
まず、肥料は大きく「普通肥料」と「特殊肥料」に分けられ、普通肥料の中に、またいくつかのグループがあります。
「特殊肥料」の方は割と具体的な肥料名が記載されていますね。
有機物由来の肥料もいくつか見られますが、法律上は「普通肥料」に含まれる「有機質肥料」と、「特殊肥料」に含まれる「有機物由来の肥料群」に分けられていることが分かります。
実用場面ではこれらを総じて「有機肥料」と表現している場合が多いでしょう。
また、それ以外のものを「化学肥料」と呼んだりもしますし、有機物を含んでいる化学肥料を「有機化成」などと呼ぶこともあります。
その肥料の法律上の表記はパッケージの保証票や表示事項を確認してくださいね。(これらの見方は5時限目で解説します)

家庭菜園やガーデニングの場面で見かけるのは、「家庭園芸用複合肥料」でしょうか。
「堆肥」については「肥料」とは別物として扱われている場合も多いですが、よく見ると「特殊肥料」の中に「堆肥」が含まれていることも分かります。
いかがでしょうか。
店頭で目にする肥料の商品名、だいたいはこの図に掲載されているものに沿っているのではないでしょうか?
次に、もう少し詳しくこれらについて解説していきます。
【普通肥料】
農林水産大臣または都道府県知事への登録・届出により生産・輸入・販売が可能になる肥料です。
見た目や臭いなどの五感では種類・品質の判別がしにくいものが多く、厳密な化学分析などが必要な物が多くあります。
登録番号、業者名、工場の住所、生産年月、肥料の保証などを示した保証票の貼り付けが義務付けられています。(パッケージの裏などに記載されています。)
【特殊肥料】
普通肥料以外の肥料のことを、特殊肥料といいます。
こちらは法律で取り締まらなくても五感で種類、品質の認識が可能なものが多く、保証票貼付の義務はありません。
身近なものとしては、未粉砕の有機質肥料や堆肥などがここに含まれています。
【単肥】
硫安や尿素のように、主成分を1種類だけ含むものです。
【複合肥料】
植物の三大栄養素(窒素・リン酸・カリウム)の中で2種類以上を含む肥料です。
複合肥料はさらに、化成肥料、配合肥料、家庭園芸用複合肥料などに分けられています。
【化成肥料】
複合肥料の内、三大栄養素のいずれか2種類以上を含む複合肥料で、化学反応をともなって製造されたものです。
一度の施肥で複数の効果が表れるので、省力化が期待できます。
資材の例)マグァンプK1号(株式会社ハイポネックスジャパン)など
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【配合肥料】
複合肥料の内、化学反応をともなわずに原料を混ぜ合わせることで製造される肥料です。
登録を受けた普通肥料同士を原料に配合されたものを特に「指定配合肥料」といいます。
一方、登録を受けた普通肥料と、指定のある特定の資材(固結防止材、成分均一化促進材、効果発現促進剤など)を配合した普通肥料(すなわち「指定配合肥料以外の配合肥料」)のことを単に「配合肥料」とする場合もあります。
資材の例)ハイポネックス複合肥料1号(株式会社ハイポネックスジャパン)など
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【家庭園芸用複合肥料】
普通肥料の内、家庭園芸専用と記載のある物、また肥料の正味重量が10kg以下のものをいいます。
資材の例)ハイポネックス液6-10-5(株式会社ハイポネックスジャパン)など
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【有機質肥料】
有機質肥料は、動物質肥料(魚類・獣類に由来する肥料)、植物質肥料(ナタネ・ダイズなどから搾油したかす、醸造かすなど)などを含む肥料をいいます。
肥効は様々で、栄養的バランスの悪いものや分解過程で植物に悪い影響を及ぼすものもあるため、施用には注意が必要になります。
資材の例)魚かす、骨粉、肉かす、米ぬか、油かす類など

【堆肥】
堆肥も肥料取締法においては「肥料」のうちのひとつで、「特殊肥料」の中に含まれます。
堆肥は有機物を微生物分解により発酵(分解)させたものです。
他の有機質資材に比べると含有する栄養分は少ないですが、施用時に植物に与える影響が小さいので安心して施用することができます。
また土の物理性(通気性や排水性、保水性など)を向上させられるという利点もあり、土壌改良材的な使用方法も有効です。
堆肥はよく見かける園芸資材でありながら、有機質肥料(普通肥料)や腐熟をせずに施用する有機物(堆肥以外の特殊肥料)との違いが分かりにくく、さらに堆肥そのものも、原料によって全く異なる性質を持っているという特徴もあり、やや手を出しがたい存在でもあります。
TOMOZOOでは、この堆肥の役割について別途機会を設けて改めて勉強していきたいと思います。
資材の例)バーク堆肥・牛/豚/鶏糞堆肥・麦わらなど

3.まとめ
4時限目は、肥料について学ぶ基礎として、そもそもの肥料の役割や園芸における位置づけを整理し、代表的な数種類の肥料(グループ)について、少し掘り下げて解説をしてきました。
肥料の概略が少し見えてきたでしょうか?
ここで解説をした肥料(グループ)の名前は、「肥料取締法」における名前を参照していますが、5時限目で出てくる「速効性肥料」「緩効性肥料」「遅効性肥料」のように、法律での規定はないものの、店頭や実用の場面でよく用いられる表現もあります。
また法律上は同じ「特殊肥料」に含まれる「肥料」と「堆肥」を全く別の資材として紹介している事例もあります。
「有機肥料」と「化学肥料」も、法律上の表現は少し異なっていました。
このように、肥料を扱う際、法律上の分類・表示方法と、実用場面での分類・表示方法が異なる場合が多々ありますので、混同しないように注意しましょう。
大事なのは手に取った肥料の中身を把握して、狙った肥効を引き出すことです。
4時限目までの勉強で、肥料の種類をおおまかに判断することができるようになったのではないかと思います。
5時限目も、引き続き「肥料について学ぼう」というテーマで、肥料の中身や効用について、解説していきたいと思います。
